量子コンピュータ等、無限の可能性を秘める【4092】日本化学工業に注目

 

【4092】日本化学工業を取り上げます。

既に9月26日にTwitterにて257円(株式併合考慮後で2570円)で注目をしており、中間配当の権利3円(併合考慮後30円)を得ている状況から考えれば実質254円(併合後2540円)からの注目となります。

ポイントは大きく3つあります。

①放射線吸着剤の復活

同社の連結業績は足元で前期に比べ伸び悩んでいる状況で、この原因の殆どが同社が開発した放射線吸着剤が福島原発向けに出荷が停止していることにあります。

既存製品の倍の吸着能力を持ち、非常に利益率が高い製品であるうえ、福島原発の廃炉に伴うその使用量は膨大と見込まれるため、出荷再開により伸び悩んでいる業績が大きく改善する期待を持つことが可能です。

前期営業利益実績は33億円、今期の営業利益見通しは25億円と8億円減額となっていることからもそのポテンシャルの高さがうかがえるのではないでしょうか。

同社としてはこの端境期の間により製品の付加価値を上げるための研究開発を継続させ、来期以降の販売増につなげていくとしています。

②リチウムイオン電池材料の将来性に期待

同社は古くからリチウムイオン電池向けの正極材を手掛けています。足元では価格下落から、採算重視での生産・販売を行っているため同社の主力事業とはなってはいませんが、今後電気自動車の普及に伴い、大幅に需要が伸びることで好採算の案件も多く増えていくものとみられます。

また、同社はリチウムイオン電池の電解液に添加する難燃剤も手掛けています。電解液に5%~10%添加することで、性能を落とさずに発火を防ぐことが可能となります。

電気自動車においてはこれまでのスマートフォンやノートパソコン向けリチウムイオン電池とは異なり、発火や爆発を防ぐ必要性が大きく高まることになるため、採用が加速すれば同社の業績を大きく押し上げる要因になるものと考えています。

③無限の可能性を秘める「量子ドット」

量子ドットとは数ナノメートル~数十ナノメートルの半導体微粒子で、3次元全ての方向から移動が制限され、狭い空間に閉じ込められた電子の状態を指し、次世代の素材として世界でも注目を集めているものです。

まず、液晶ディスプレイに導入することで、より鮮やかに、また消費電力を低減できるとして注目をされています。

これまでは量子ドットにカドミウムを含んでいたために採用が見送られていましたが、カドミウムフリーによる量産技術が確立されたことで普及が加速していく期待が高まっています。

同社はカドミウムフリーの量子ドットの大量生産技術を確立し、他社と比べても価格面や品質面でも競争力が非常に高い製品の開発に成功、目下のところ液晶ディスプレイメーカーへの採用へ向けたサンプル出荷を行っているとのことです。

一方で、量子ドットは液晶ディスプレイにとどまらず、あらゆる次世代製品に採用される可能性が大いにある点に注目ができます。

まず量子ドット太陽電池。ノーベル賞受賞候補となっているペロブスカイト太陽電池の発明は既存のシリコン系の太陽電池に比べて高効率や低コストである点が特徴でありますが、これを上回る期待があるのが量子ドット太陽電池です。

さらには量子ドットの可能性として、量子ドットレーザーや次世代の半導体、また量子コンピュータにも応用が期待され、あらゆる可能性を求めて用途開発を進めています。

いずれにしても、「量子ドット」が世界を大きく変える無限の可能性を秘めた新素材であり、コストや品質面においても競争力が高く、また参入障壁も高い独自の製造方法を確立した同社の将来性には期待が持てるところであると言えます。

同社は将来的に量子ドットに関連する売上を100億円を超える事業に育てていく計画があるようで、その礎ともなる設備投資を今期から来期にかけて行うとしています。

前期の設備投資実績が22億円、今期は34億円、来期は53億円と設備投資を加速させる計画からも積極的な攻勢に打って出ていることがうかがえます。

株価は長らくもみ合い、毎期積み上げた利益も膨らんできたことから一株純資産は3730円にまで膨張、PBRは0.7倍にまで切り下がりました。今期は放射線吸着剤の端境期から業績が落ち込んでいてもPER14倍台と来期浮上することを前提にすれば割安と言える水準であります。配当利回りにおいても通期で60円配、利回りにして2.3%ほどと、利回り妙味もあります。

まずは来期業績浮上期待やPBR面の割安感からの水準訂正を期待しつつ、電池材料や量子ドットの将来性が有機的に繋がっていくことでの株価の上昇に期待をして参りたいと考えています。